未経験でこの仕事を始めた頃、一番の不安は「東京の道を覚えられるだろうか」でした。同乗研修で助手席に乗ってくれた先輩に、正直にその不安を話したことがあります。

返ってきたのは、拍子抜けするくらいシンプルな一言でした。「行き方だけじゃなくて、帰り方までイメージしながら走ってみ」。

言われてみれば当たり前なのですが、当時の自分は目的地に着くことだけで頭がいっぱいで、帰りのことなんて全然考えていませんでした。次の乗務から、ナビに案内されて走りながら「この道、逆方向から来たらどう見えるんだろう」と意識するようにしてみたら、確かに景色の残り方が変わりました。一方通行だけの記憶ではなく、その場所を立体的に覚えられる感覚です。

もちろん、これで一気に道が頭に入ったわけではありません。今でも知らない道はたくさんあります。ただ、ナビタイムのタクシーモードという頼れる相棒がいる時代なので、全部を暗記する必要はないと思っています。大事なのは、ナビに任せきりにせず、自分の中に少しずつ土地勘を積み上げていく意識を持つことです。未経験だから道を覚えられない、ということはありません。焦らず、行き帰りセットで覚えていけば十分です。


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